取締役会議事録は、企業が不動産売買を行う際に法的根拠を示し、意思決定の透明性を確保する重要な文書です。不動産取引が後にトラブルになった際、議事録が適切に作成されていないと、取引の無効や訴訟リスクが発生する可能性があります。そのため、以下の重要項目を確実に記録する必要があります。
開催日時・出席者の記録ルール
議事録に記載すべき内容
議事録には、取締役会の開催日時や場所、出席者を正確に記録する必要があります。これは、会社法に基づいた正式な会議であることを証明するためです。
記載例
- 開催日:2025年3月5日
- 開催時間:10:00~11:30
- 開催場所:本社会議室(東京都〇〇区〇〇)
- 出席取締役:代表取締役 〇〇〇〇、取締役 〇〇〇〇 ほか
- 欠席取締役:なし
- 議長:代表取締役 〇〇〇〇
- 議事録署名人:取締役 〇〇〇〇
正確な記録を残すことで、取締役会の決定が適正に行われたことを証明できます。
議題・決議内容・賛否の記録方法
取締役会で議論された議題や、その決定事項を詳細に記載します。また、議決に参加した取締役の賛否を明記し、意思決定の正当性を証明できるようにします。
記載例
議題: 〇〇ビルの売却に関する決議
内容: 〇〇ビルを1億円で売却する契約について承認の可否を議決
決議結果: 賛成〇名 / 反対〇名 / 棄権〇名(賛成多数で可決)
注意点:
- 議事録に曖昧な表現を用いず、具体的な数値や契約条件を記載する。
- 決議の方法(挙手、投票など)を明記する。
適法性を担保するための文言・記載例
適法性を確保するため、以下のような文言を記載することが推奨されます。
記載例:
「本取締役会において、会社法に基づく正規の手続きを経て、当該不動産売買契約の締結を決定した。本決議の内容は、出席取締役全員の承認を得たものであり、これを正式に議事録として記録します。」
このように記載することで、議事録が法的な証拠としての効力を持つようになります。
利益相反取引に関する取締役会議事録の重要ポイント
不動産売買の取引に取締役が関与する場合、会社法上の「利益相反取引」に該当する可能性があります。利益相反取引では、取締役会で特別な承認手続きが必要です。
取締役が不動産売買に関与する場合の議事録の書き方
取締役が不動産の売主または買主となる場合、通常の取引より厳格な議事録の作成が求められます。
記載例: 「本取締役会において、取締役 〇〇〇〇が売主となる不動産売買契約(売却金額:1億円、所在地:東京都〇〇区〇〇)について協議を行った。会社法第355条に基づき、当該取締役は議決に参加せず、他の取締役による審議の結果、賛成多数により承認された。」
利益相反取引の承認プロセス(会社法355条)
取締役が関与する取引の承認手続き
会社法第355条により、取締役自身が関与する不動産売買は、特別な承認手続きが必要です。
承認プロセス
- 取引の説明:取締役が関与する不動産売買の契約条件を詳細に説明する。
- 取締役会での審議:関与する取締役は議決に参加せず、他の取締役が承認の可否を決定する。
- 議決結果の記録:賛否を明記した議事録を作成し、法的に有効な記録として残す。
承認記録の記載例
- 議題:取締役 〇〇〇〇が関与する不動産売買契約の承認
- 取引の詳細:売買金額、契約条件、取引相手
- 承認手続き:会社法第355条に基づく審議
- 賛否:賛成〇名 / 反対〇名 / 棄権〇名(賛成多数で可決)
適切な手続きを経ることで、利益相反取引の適法性を確保できます。
議事録の押印・電子保存は可能か?最新の法律動向
近年、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進により、議事録の電子化が進んでいます。電子議事録を活用することで、法的証拠力を高め、業務の効率化が可能になります。
議事録の法的証拠力を高める方法
- 原本性の確保:原本性を確保するため、電子署名を使用する。
- 改ざん防止:電子署名やタイムスタンプを活用し、改ざんを防ぐ。
- 登記手続きでの活用:商業登記法改正により、電子議事録も登記所に提出可能。