ポイント還元・支払いスピードなどのメリット
クレジットカードによる不動産決済は、現金や振込とは異なる新しい選択肢として注目を集めています。特に、仲介手数料や初期費用などの一部にクレジットカード決済を導入する不動産会社が増えており、ユーザーにとっても多くの恩恵があります。
最大の利点は、やはりポイントの還元です。不動産取引は金額が大きいため、例えば30万円の仲介手数料をカードで支払えば、1%の還元率でも3000円分のポイントが貯まります。クレジットカードによっては2%以上の還元もあるため、航空会社のマイルや電子マネー、ショッピングでの割引に使える点も魅力です。中には年間利用額に応じたステータスアップや追加特典を受けられるケースもあります。
また、支払いタイミングを後ろ倒しにできる点も、キャッシュフローを意識する人にとっては大きなメリットです。たとえば、入居後に家具や家電の購入など別の出費が見込まれる場合でも、クレジットカードならその場で資金を用意せずに支払いが完了するため、手元資金の温存が可能です。これにより、急な出費や予期せぬ支払いに備える余裕が生まれます。
支払いのスピードや利便性も見逃せません。銀行振込では営業時間や手数料がかかるケースもありますが、クレジットカード決済ならオンラインで即時処理が可能なため、手続き全体の効率化につながります。とくに、契約から入居までのスケジュールがタイトな場合は、スピード決済のメリットが大きく、トラブル回避にも有効です。
こうした背景から、クレジットカード決済に対応する不動産関連費用は次のように整理できます。
支払い項目
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クレジットカード対応状況
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備考
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仲介手数料
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一部対応あり
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不動産会社により異なる、事前確認が必要
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敷金・礼金
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原則不可
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現金預かり扱いのため対応不可が大半
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登記費用
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原則不可
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司法書士が扱うため、カード利用はほとんど不可
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火災保険料
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対応可能
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保険会社や契約方法によってはカード決済が選べる
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家具・家電購入費
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対応可能
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入居準備費用としてカード利用しやすい
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修繕積立金・管理費
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一部対応あり
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管理会社により対応可否が異なる
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キャンセル・返金不可・限度額の壁といったデメリット
一方で、クレジットカードによる不動産決済にはデメリットも数多く存在します。まず最も実用上のハードルとなるのは、クレジットカードの利用限度額です。一般的なカードでは50万円から300万円程度の限度額が設定されており、数百万円から数千万円の不動産取引では限度額を超えてしまうため、すべてをカード払いにするのは現実的ではありません。限度額の引き上げには審査や日数がかかるため、急な取引には対応しづらい面もあります。
また、不動産契約は通常、契約成立後に手付金や仲介手数料を支払う形式となっていますが、これらをクレジットカードで支払った場合、キャンセルや契約解除があったときに返金がスムーズに行われない可能性があります。現金とは異なり、カード会社の決済処理を経由するため、返金までに時間がかかるだけでなく、そもそも返金に対応していないケースもあるため注意が必要です。
カード決済によって発生する手数料の扱いにも差があります。不動産会社の中には、加盟店手数料を顧客に転嫁する方針を取っている場合もあり、数%の手数料負担が購入者に課されることもあります。たとえば、30万円の仲介手数料に対して3%の手数料が加算されれば、合計で30,900円を支払う必要が出てきます。現金払いとの比較で実質的な負担増となることは否めません。
さらに、住宅ローンとの併用時には注意が求められます。ローン審査の直前に高額なクレジットカード利用があると、信用情報に影響が及び、審査に通過できなくなる恐れがあります。金融機関によってはカードの利用状況を詳細にチェックしており、リボ払いや未払い残高があればマイナス評価につながるリスクも存在します。
加えて、分割払いやリボ払いを選択することで発生する金利負担にも配慮しなければなりません。住宅ローンの金利と比較すると、クレジットカードのリボ金利は10%を超えることもあり、長期的な返済プランとしては非常に不利です。費用の分割を意図した場合でも、信販会社の住宅関連ローンやブリッジローンの方が条件的に有利なことが多いため、カードによる分割は最後の手段と考えるのが適切です。